2019.04BVLGARI HOTEL SHANGHAI
LEGACY
SEQUENCE DESIGN
中国上海の中心部を流れる黄浦江の支流、蘇州河下流部に位置する約50haの開発区の一
画に歴史建築を活かしてホテル、レジデンス、レストラン、商業、オフィスを整備するプ
ロジェクト。
用途・規模・時代の異なる建物を一体的につなぎ、ひとつのホテルブランドにまとめる統
合の役割をランドスケープが担っている。
租界都市として繁栄を極めた上海固有の歴史的コンテクストをデザインに引き込み、租界
時代から継続する「時間」を築くことを試みた。
所在地 | 中国上海市河北南路33号 |
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主用途 | ホテル、レジデンス、レストラン、商業、オフィス |
事業主 | 華僑城(上海)置地有限会社 |
建築設計 | フォスター・アソシエイツ、現代都市建築設計院 |
景観設計 | 株式会社ランドスケープデザイン |
インテリアデザイン | アントニオ・チッテリオ、パトリシア・ウィール |
施工 | 中興建築集団 |
設計対象面積 | 約15,000m2 |
建築規模 | 地上46階、地下3階、塔屋5階 |
最高高さ | 約150m |
再生された建築と市政用地を新たな芝生の広がりによって連続させて、奥行きのある一体的な都市空間としている
舗装と芝生のゆるやかな連続
大径木の植栽が芝生広場の背景をつくる
本プロジェクトの大きな特徴は、PPP事業として民間事業者が敷地内に建つ旧商工会館を歴史的建造物として復元し、ホテルの一部として運営する点にある。建物はもともと1916年に商工会館として建設され、その後近年まで使用されず老朽化し放置されていた。デベロッパーの華僑城は建築の歴史的検証をもとに復元を行い、オペレーターのブルガリホテルがボールルームやレストランとして運営を行うことが取り決められた。この枠組みのなかで、ランドスケープは官民に境界をつくらず歴史建築と計画エリアが一体となる空間づくりを目指した。建物の水面へ写り込みを表現した「商工会館前芝生広場」は、新たなパブリックスペースとして蘇州河沿いの都市空間の豊かさを高めることに寄与している。
Water水庭、Edible果樹の庭、Sound音の庭、Fragrance香りの庭、Shade日陰の庭など、7つのテーマで構成している
世界中の建築家が差異化のための新しさやアイコニックさを競う中国で、租界都市として繁栄を極めた上海固有の歴史的時間を現在に引き継ぐことは、本プロジェクトにおける重要テーマと考えた。商工会館とともに再生された楼門や境界壁を街のコンテクストとしてとらえ、新たなホテルガーデンを計画した。商工会館前のスペースには、租界時代に好まれていた樹種を選んで大径木で用いることで、歴史的に継続する「時間」を表現した。
用途の異なる複数施設をひとつのホテルブランドとしてランドスケープが統合した
1940年頃の蘇州河
開発地区全景
蘇州河下流部の河畔一帯は、開発が遅れ一部スラム化していたが、上海市が都市再生のための開発地区に指定し、現地デベロッパー華僑城の投資によって開発がスタート。「ブルガリホテル上海」はそのリーディングプロジェクトに位置付けられた。
水盤が商工会館の夜景を映し込む
中心から湧き出す水は厚さ5mmの水膜で水盤表面を流れる
計画地の蘇州河の河畔は、租界時代に水運で繁栄を極めた歴史をもつ。このプロジェクトでは新たな計画によって街の魅力や価値を高め、かつての賑わいと活力を再生することが期待されている。プロジェクト全体を統合するランドスケープは、この地の繁栄の象徴である「水」を統一的なモチーフとし、その揺らぎやきらめきをテーマとしたデザインをおこない、質感を活かすための詳細検討を重ねた。また、用途に応じたゾーニングや動線計画、空間構成によって、低層の保存建築、高層 のブルガリホテルやブルガリレジデンス、隣接する商業施設やオフィス棟など機能や形態の異なる複数の施設をひとつの場にまとめ、ホテルブランドに相応しい精度を高めた詳細設計をおこなった。
※写真提供:Terrance Zhang、 LouWen