LD LETTER

vol.7

2021.06  KANAGAWA INSTITUTE OF TECHNOLOGY

SKELETON

EVIDENCE

BUSTLE

キャンパス・リニューアルプロセスのランドスケープ 神奈川工科大学 学生プラザ

「学生サービスの向上」を目指して、2003年から始まったキャンパスの再生計画。当初大学が課題としていた密集した中低層校舎によるオープンスペースの不足に対して、創立以来の既存校舎を順次建替え、高層・集約することで、キャンパスの中心に外部での学生の居場所となる約 65×130mの広大な芝生広場を創出する将来マスタープランを描き、キャンパス再構築を進めました。
広場に対して、既存校舎と新築校舎が緩やかな統一感を持てるようなランドスケープデザインを目指しました。各校舎の賑わいが広場に表出し、大学のシンボルとなる活気ある風景が創り出されています。

再編前航空写真に学生プラザ位置を重ねる

神奈川工科大学 キャンパス・リニューアル
所在地 神奈川県厚木市下荻野1030
主用途 大学キャンパス
事業主 学校法人 幾徳学園
外構設計 株式会社ランドスケープデザイン
建築設計 KAJIMA DESIGN
石上純也建築設計事務所(KAIT工房,KAIT広場)
三菱地所設計(KAITアリーナ)
施工 鹿島建設 横浜支店,小島組

東側から学生プラザを見る

東西軸の延長線上にある丹沢山系が借景としてキャンパスに取り込まれる

キャンパスの周囲に広がる雄大な自然環境

新正門スクエアのシンボル樹木と円形ベンチ

キャンパスの骨格を構成するランドスケープデザイン

面積約13万㎡の神奈川工科大学キャンパスは、厚木市北部の相模原台地上の豊かな自然に囲まれた地域に立地しています。「学生プラザ」と呼ばれる広大な中庭に、相模川水系、丹沢山系という神奈川を代表する2つの自然環境を東西軸に引き込みつつ、大学の象徴的存在である図書館を北側正面に据えた歴史の南北軸という明快なマスタープランを構築し、キャンパス全体の動線、機能に配慮した、キャンパスの骨格となるランドスケープとしました。

図書館前広場

キャンパスの歴史を語る保存樹木を活かしながら足元に新たに設えられた学生コミュニケーションの場

旧校舎柱跡が刻まれた中庭

歴史への敬意とコミュニケーションの場

キャンパスの再編では、再編前の長い大学の歩みについて敬意を払うことを忘れてはなりません。大木の既存樹木は出来る限り保存活用し、移植も多く試みました。芝生に刻まれた旧校舎の柱跡や銅像など学生プラザには多くの歴史が刻まれています。一方で、キャンパス内での学生の居場所の創出についても、多様性をもって多く設定することを目指しました。学生プラザは、多様な学生生活を支える小さなコミュニケーションスペースが点在する、どこからも出入りできる自由でフラットな広場となっています。

コミュニケーション・コアとしての学生プラザ

大学を訪れる人々は、必ず学生プラザを通過し、各建物へと分散していく

表面温度の検証

風速分布の検証

キャンパス温熱環境向上の検証

キャンパスの中心の緑の広場は、温熱環境や風通しを向上させました。体感温度変化についても、温冷感の向上が確認できました。

学生プラザを行き交う学生

人流のトラッキング

学生の一日の滞在場所の変化

キャンパス内の人流の検証

キャンパス再編後の人の動きや滞留場所の変化について計測を行いました。人流の予測に応じて設定された通路の幅員の設定や学生の居場所となる滞留空間の大きさについて、確認することが出来ています。今回のキャンパスにおけるランドスケープデザインの妥当性が評価できたと考えています。

エビデンス設計とデザインの検証

科学的根拠に基づく「エビデンス設計」は、個人の恣意や好みによらない、新たな設計手法として注目されています。快適な居場所を設計するために、温熱環境や風のシミュレーションや卓越風の検討を行ったり、広場の大きさや通路の幅員を決定するために、イベント時の混雑状況や人の動きを予測したりなど、様々な試行を重ねています。竣工後は、これらのモニタリングデータを収集しフィードバックを行い、エビデンスのさらなる精度向上を目指しています。このキャンパスの大規模な再編は、環境的にも大きな改善をもたらせました。